2023年05月15日

技術立国と言いつつ(1)-浸水被害にあう家、改良できるのでは?

私が学生の頃、得意だった学科は英語やら美術だったりして決して理数系好きではなかった。しかし何の因果か、それなりの苦労をして土木技術者となって40年になる。技術者だからという訳ではないが、すぐに改善・改良を考えることが習い性になった。

例えば、今でも話題に上るゲリラ豪雨、線状降水帯とかいう局地的豪雨がある。田舎にも都市部にも激しく降る雨は、家や商店の床を台無しにしている。折角、きれいにしたものの1、2年して再び同じような災禍に合われている方々もおられ、実に気の毒なことと思う。このような情報に接すれば反射的に、だったら、こうしたらというような対策を考えるのが癖のようになっている。



例えば、家というものを水密構造にできないかと考えるのは至って自然なことだ。当然ながら、あるハウスメーカーが家を水密構造にして、作用する浮力に対し、浮上する構造を考案、試験を行ってその性能を確認しているとのニュースに接した。詳細を取材した訳ではないが、浮いても敷地に打たれた杭と鎖で接合されていて、どこかに流せることは無いというのが売りの様だ。



考えが非常にシンプルで面白い。しかしもっとシンプルに出水時に、ドア(自動ドアを含め)あるいは窓をロックして水密性を高め浸水を許さない構造にするだけで多くのケースで救われるのではないかと思う。そして当然のことながら基礎部分は地中構造として、床下への浸水は許さず簡単な基礎杭等を具備しれば、1m程度の出水には十分に耐えられるのではないか。これ以上の大出水時には対応は難しくとも、救われるケースも多いのではないかと思う。1mの水位といってもかなりの水圧がかかるから部材を厚くするなどの配慮は必要だ。反面このような対策は防犯上の安全性も向上するという副次的効果も期待できる。



土砂災害というのも、実に痛ましい。そもそも思うだが、山に近くかつ谷地形の場所を何故、宅地開発としての開発許可が下りるのか。当然、谷地形は盛土され平地になるのだが、盛土の下には従来のように水が流れる。暗渠排水工を設置しても、絶対に安全という保障はない。足元を水で緩められるにだ。盛土の崩壊・地すべり等が発生する危険性は常に存在する区域で生活が営まれている。土砂災害は必ず水が関係している。土木という仕事は水との闘いと言っても良い。ただ相手は自然だし極力、闘う事の無いようにすべきと思う。都市計画上の問題と思うが、今後の人口減少も考えれば、なるべく住居地域はまとまって安全な区域にコンパクトに収まるように誘導すべきと思う。



技術立国といいつつ、最先端の技術は別にしてあまり末端の技術の進歩があまり感じられない。知恵で戦って行かなければ、泣く人は減らないのではないかと思う。

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